小説家の妻が溺愛している夫をネタにしてるのがバレまして…
夫の知らない顔
《「ものすごく気持ち良さそうだったね…。そんなに良かった? 僕の指、美味しそうに咥え込んで…。」》


おいしいと思うシーンを詰め込んで、時には郁人くんが本当に私に向けて起こした行動を入れて。


(……わぁ…筆が乗る乗る…)


郁人くんに甘やかされた後の執筆活動は驚くほどにスムーズ。

ちなみに『締め切りまで頑張るから抱きしめて欲しい…!』と、頼み込んで、ハグをしてもらった。
……案外…腕の筋肉しっかりしてて…いつまで経っても慣れないしドキドキする。


妄想通りにエッチしたらどうなるんだろう?
今よりももっと筆が乗るかな?

………などという淡い期待以前に、そんなことは絶対に起こらないと知ってはいるのだが。


「ふぅー……あとは推敲だけ…」


手に持っていた過去の自分の小説諸々を机の端に寄せてパソコンを折りたたんだ。


推敲は残っているけれど、ここまで来ると達成感に包まれ、奮発して買ったリクライニングチェアに身を委ねながら脱力をする。それがとてつもなく気持ち良くて……強い眠気に襲われる昼下がり。


締め切りに間に合いそうで良かった…。


安堵しつつ、大きなあくびを一つすると、重たい目蓋に逆らえないまま私は眠りについた。
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