君がいたから

現実逃避


冗談でしょ? 嘘だって言ってよ。

蓮先生はそんな人を傷つけるような
嘘を言わないことは知っている。

それでも、嘘であってほしい…
そう願わずにはいられない。


「結愛ちゃん…」


「喋らないでよ… なんで………っ こんなことに…」


蓮先生の声を聞くと
『白血病の可能性が高い…』
その言葉が頭の中で何度も繰り返される。


白血病って………血液のガンでしょ。
テレビとかで見たことあるから怖い病気だってことも知っている。

実際その病気で死んじゃった有名人とかもいるし。


私も死んじゃうの…?
死にたくない…
嫌だ。 生きたいよ。


治るのか…それとも死んじゃうのか
まだわかっているわけじゃないけど
今までの幸せだった生活がガラリと変わってしまうことだけはわかる。


「嫌だっ………こんなの… 」


パニックになってしまって、
検査室を飛び出す。


「 結愛ちゃん 」


そんな声がしたけど、振り向かないで走って病院から出る。


私、走れたんだ。
そんな力があったことにビックリだよ。


「はぁ…はぁ……… 」

だけど、クラクラし、胸が苦しくて
家まで帰る体力はなく、

公園の遊具の影に
隠れるようにしゃがむ。


どんよりとした空はまるで私の感情みたい。
ジーッと空を見ていると

涙が落ちてくるかのように
降ってくる雨に当たる。


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