君がいたから

治療開始


次の日

憂鬱な気分で、
蓮が朝の回診にくるのを待っている。


蓮の顔が見られる、それは嬉しいよ

でも、治療されるとなると話は別…

背中に注射って…
想像するだけでひ汗がドバっと出てきて
、朝ごはんも喉を通らない。

副作用で吐き気出るから
始める前に少しでも食べてって言われたのに…



減らないご飯を見ているとガラリとドアが開けられる。


「結愛、おはよう 」

笑顔の蓮で微笑む蓮

だけどその手に持っているのは
注射器が入った、銀色のトレーと点滴…

思わず後ずさりしてしまう。


「…こないで 」


「ごめんね…怖いよな」


蓮は眉を下げて悲しそうな表情をするものの

すぐに私に目線を合わせてゆっくりと
近づいてくる。


「まだ、しないから。
とりあえず診察しよう 」


聴診器を耳にかけている微笑む姿は、
マンガの絵みたいにカッコいいけど…

このあとされることを考えると
怖すぎて目を反らしてしまう。


「…痛くないから落ちついて深呼吸だよ 」


ボタンを外されて聴診器が肌に当てられていく。


聴診器の冷たさが苦手だったけど
蓮が手で温めてから、聴診してくれたから
ヒンヤリとする感覚はなかった。



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