ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
どうしてそんなことを言ったのかという疑問が頭の中で膨らみすぎて冷静に物事が考えられないまま、ロザンナは大広間の中央でアルベルトと向かい合う。
滑らかな足の運びで踊り出したふたりに、周りからうっとりとしたため息が発せられた。
そっと腰を引き寄せられ、ロザンナの耳をアルベルトの息が掠めた。
「ここにもロザンナを望んでいる人間がいることを忘れないで欲しい」
演奏は終わっていないのに、そこで完全にふたりの足が止まる。アルベルトとロザンナは、目の前にいる相手だけを視界に宿す。
そっと掴み上げたロザンナの手の甲へと、アルベルトは口付けた。
懇願の声音、触れた唇の熱。向けられる真剣な眼差しに「俺を見ろ」と訴えかけられた気がして、ロザンナの顔が一気に赤らんでいく。
しっかりと手を掴み直し再び踊り始めても、ふたりの視線は繋がったまま。
周囲の騒めきよりもうるさい自分の鼓動を感じながら、ロザンナは微笑むアルベルトから視線を逸らすことができなかった。