一生ものの恋をあなたと
まさかの展開に動き出していた足が止まった。

その男は愛の頭をクシャクシャと撫でて、愛に髪を乱したと文句を言われていた。
ずいぶんと親しい。

え?
その男が、次はベッドロック…
いや、後ろから…抱きしめたのか…?
でも、愛は…嫌がるどころか、笑ってる?
後ろから抱きしめているその男を見上げて

「もう〜まこちゃん!
くるしい〜!
フフフ…本当のことじゃなーい…」

甘え切った声で、見上げたその男にそう言ったように聞こえた。

え?
その男、まこちゃんが愛の頭に齧り付いた⁉︎

でも、愛は嫌がるどころか、
ニコニコ笑って……齧られた頭を自分で撫でている…。

な!
愛が……自分から抱きついた……

それを、その男は愛おしげに抱きしめて頭を撫でている…

まさか
ウソだ

愛に…新しい男が出来たのか……?

目の前で起こった事が、信じられなかった。

誤解を解いて、今日は仲直り出来るはずだった…
俺と同じように、きっと愛も傷ついたはずだ。
俺が隙を作ってしまったからだけど…
日本に帰ったら、絶対取り戻すって、ここまで来たのに、一体これはなんだよ……


……とんだ茶番だ。
この半年、悩み続けたのは俺だけだった。
愛には新しい男が出来ていた。

失意と怒りの中、俺はその場を後にした。



もちろん、まこちゃんが誠、つまり愛の次兄だと…後に俺は気づくことになるのだが、
その時は知る由もなかった。


そうして、俺達は完全にすれ違ったまま、大学時代を過ごすことになった。







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