3人の理想郷
「やっとここまで来れたな」
「うん…そうだね」
「ラストスパートだ、行くぞ!シャル、シュン!」
「「了解!」」

シュウが大きな扉を開き私達は武器を構え暗い通路を進んで行く。
ギギギと音を立てながら大扉が閉まって行き、閉まると同時に
入口から奥に向かい、暗い通路のランプに青色の炎が宿っていく。
そして最奥に大きな玉座が照らされ、そこには6の腕を持つ龍が座っていた。

「あの龍が魔王か?」
「ラスボスはやっぱり魔王でしょ」

そう言うシュウに私は同調する。

「行くぞ!」

そう言ったシュウに続き私達は走り出す。
そんな私達に魔王は腕の一つをこちらへ伸ばす。
魔法か…?。
指先から火の玉が現れ、飛んでくる。
それを避けると地面に当たり爆発する。
凄い威力だな…。

「これは当たったら私は1撃で死亡しそうだね…」
「なら当たらなかったらいいんじゃないか?」

そうシュンが疑問のように言う。
そうだけどさ…。
そしてある程度近づき、魔法が撃たれたとき、私達は散開する。

「【天駆】!」
「【迅雷】!」

私は魔法を躱し、魔王の首筋に向かい天を迅雷の如き速さで駆け大鎌で切り裂く。

ガキィン!
「なっ!?」

そんな一撃は魔王の首筋を傷つける事すらかなわなかった。

「ちぃ!【ブラッディーエンチャント】!」
「【爆炎】!」

そう唱え魔王の首筋にデストラスを突き立てる。
鱗の間に突き立てると首に一つの傷が出来る。
龍の魔王で良かった!。
そしてその傷を爆発させると周りの鱗が数十枚はがれた。

「シュウ、お願い!」

そう言って私は奴の首を蹴り飛ばし、その鱗を下に落として魔王から離れる。

「おーけー!、【神斬】!」
「【天落とし】!」

そう言ってシュウは飛び、魔剣で首を切り裂き続ける。
さすがパワータイプだね…、凄い連撃じゃん…。
天落としは敵を貫き、空に居る敵を下へ落とすスキルだ。
それを首元に刺し貫かれた魔王は後ろに向かい、倒れて行く。

「よっしゃあ!」
「シュウ!離れろ!!」

そう喜ぶシュウにレスターは怒鳴る。
その時、魔王の腕が動きシュウが捕まえられる。

「ぐ、離せ!」
「シュウ!」
「シャル飛ばすぞ!あいつの腕を刺し貫け!」
「了解!」

私はレスターの大剣に足を乗せ大剣を振るい、私がそれを蹴る事で圧倒的な速さで魔王へ飛ぶ。

「【迅雷】!」
「【天駆】!」

それに私は迅雷と天駆で更にスピードを高めてデストラスを大きく振りかぶり魔王の手首を刺す。
魔王の腕はなぜか柔らかくなっておりバターのように魔王の腕が切り落とされる。

「!?」

予想外の事に私は勢いを付けすぎ、反対側の壁に着地する。
魔王を見ると魔王から黒い触手のようなものがたくさん溢れ出ていた。
みしみしと音が聞こえ王座の間が壊され、そこからたくさんの触手が現れて
王座の間が全て破壊される。
そしていつの間にかダンジョンは星の煌めく夜空の平原に変わり、
その平原には6個の足が生え、たくさん口や触手が生えているモンスターが9体おり、それの上には
大きな大きなモンスターが君臨していた。

「メエエエエエェェェェェェェェ!!!!!」
「メエェ!メヘェェェェ!!!」

魔王だったモンスター達がヤギのように鳴く。
たくさんの口と触手を持つ6つ足のメエとヤギのように鳴く者を私は一体しか知らない。
まさかこのゲーム、『ブレード&マジック』にこんなのが居たとは…。

「黒イ仔山羊…」
「てことは…!」

だとしたら上のはクトゥルフ神話女神、シュブ・ニグラス…。
こんなの…殺せるのか…?。

「あいつを倒せば終わるのか?」
「何を言って…」
「あいつを倒せば俺らが最強!…だろ?」
「…はぁ?」

全く…こいつと言うやつは…。
あいつが言うなら私達でこいつを倒さないとね…。

「ニグラスを殺すなら、山羊から倒さないと…」
「そうか、なら俺が囮になる!その隙に仔山羊どもを倒して来い!」

そう言ってレスターはニグラスに向かい駆ける。
まったく…昔はここまでカッコイイ事言うような奴らじゃなかったのにね…。

「君等にばっかりいい格好はさせられないよ…」
「シャル、なら俺達で早く小動物どもを駆除しないとなぁ…?」
「そうだね」

そう言って私は剣を構えるシュンの後ろで大鎌をまた、構え直し、強くにぎり締めた。
シュンは駆け出し、それに着いていき、大鎌を振るう。

「【神斬】!」
「【迅雷】!」

そう唱え、シュンが切り裂き、露出させた魔石を切り裂き、確実に殺して行く。
時に私が切り裂き、時に貫き、全ての山羊達を倒した時、私達の持つ武器は変化した。
私の大鎌が機械のように変わり赤い大きな魔石が刃に埋め込まれそこから赤い線が入っている。
そしてその大鎌の柄に『死神の大鎌デストラス』と書かれていた。
シュンの剣も赤い魔石が柄の下に埋め込まれそこから波紋状に脈打つように剣先に向かい広がって行く。
そしてその剣の柄には『神魔の剣ティルフィング』と書かれていた。

「なんだこの剣!?ってか早くレスターのところに…」

そう言った所で地震が起こったように地面が揺れ、辺りを見渡すとニグラスが倒れている。

「どうした化け物!」

声が聞こえそこを見るとレスターがニグラスに走っていた。
私達はレスターに近づき一緒駆ける。
レスターの大剣のガードの所に赤い魔石が見え、そこから黒い炎が伸びていく。
その大剣の柄に名が書かれておりそこには『暴虐の大剣ルヴァリアス』と書かれていた。

「すげえなレスター!」
「囮なんだからちゃんと引きつけねえとな!」
「で?武器が変型したんだがどうやって倒すんだ!」

「もし…3人だけでこんなゲームで最初にラスボス討伐したら英雄って呼ばれるかもね?」
「…ああ!そうだな!3人で行くぞ!【神斬】!」
「【断罪】!」
「【血界】!」

その一撃は一瞬でニグラスを討伐してしまった。
それはあまりにも早く、まるで自分が物語の英雄になったようにも感じた。

「ッッッ!勝ったぞー!!!」
「やったー!!!」
「しっしゃあ!」

そう言って私達は勝利をよろこびあった。
そして、私達はラスボスを倒し開いたポータルの上に乗った。
ついに、私達は、最高の栄光と名誉を手に入れた。
だが、あの後、私達をあんな事態が迎える事になるとは、思いもしなかった。
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