全世界で特に暑かったのは、日本だった。
が、そこに救世主があらわれた。
からだじゅう氷で覆われた謎の生命体――彼の名は氷人間だった。
「助けてくれ!」
「暑くてもう死にそうだよ!」
「誰か助けて!」
「えーん、えーん」
東京で水道管から濡れた水を浴びる老若男女の市民たちが泣き叫んでいた。
すると、ひとりの少女が悲鳴をあげた。
そこにあらわれたのはアイスマンだった。
彼女が悲鳴をあげるのも無理はない。
身の丈190cmもある大男のからだはクリスタルのように透けており、しかも筋骨隆々の化け物に見えたからだ。
市民たちが恐怖で慄くのをよそに、
しゃがみこんだアイスマンは灼熱の大地に掌を押しつけると、
眩しいほど青白い光がスパークした。
すると、瞬く間に大地の表面は氷と化した。
「うへえっ、涼しい」
「助かったわ」
若いカップルが安堵のため息をもらした。
市民たちは喜びアイスマンにヤンヤの喝采を浴びせた。
無言のまま立ち尽くす彼に少女が声をかけた。
「ありがとう」
「礼には及ばん」ロボットのような声だった。
「あなたのおなまえは?」
「アイスマンだ」
彼は少年のように照れて頭をかいた。
「お嬢ちゃんの名前は?」
「わたし結愛」
「いい名前だ」
すると、元東京都知事の禿げ頭の男が彼に握手を求めた。
「あなたは、まさしく英雄だ」
「握手はできない――」
握手を拒んだアイスマンに対して、強引に握手を交わした、つぎの瞬間、彼はカチンコチンに凍ってしまった。
「わははは」
笑い声。
「別に生命に別条はない」
数秒後、自然解凍した彼は激しくかぶりを振って立ちあがった。「ひええっ」