君は愛しのバニーちゃん
※※※





 本来の目的であったパンダの展示ブースへと移動してきた俺は、先程撮影したばかりの写真を携帯越しにスライドさせた。


(あぁ……! か、可愛い……っ♡ 可愛すぎだよ、美兎ちゃんっ!!)


 モフモフの姿など、ほとんどが見切れてしまっている写真達を眺めては、鼻の下を伸ばしてだらしなく微笑む。


『——それでは、お待たせ致しました。パンパンの入場です!』

「瑛斗先生っ! 『パンパン』が出てくるって!」

「…………。うん、楽しみだね」


 それにしても、パンダの赤ちゃんの名前が『パンパン』とは……。パンダからとった『パン』だか何だかは知らないが、もはや安直を通り越して卑猥《ひわい》にしか聞こえない。
 さっきから、美兎ちゃんが『パンパン』と口にする度、俺の頭の中には『パンパン』の妄想が膨らむばかりだ。勿論、それはパンダの『パンパン』という意味などではなくて、もっと大人の方で——。


(……グハァーッ!! 美兎ちゃんと、今すぐにでも”パンパン”してぇ〜ッッ!!!)


 動物園も、なんだってこんなに卑猥な名前を名付けたのか……。そのお陰で、俺の頭の中は美兎ちゃんとパンパンとセ○クスしている妄想でピンク一色だ。
 流石に、中学生相手に本気で手を出そうだなんてことは思っていないが……。もし、仮に……万が一にでも——。

 美兎ちゃんが誘ってくるなら、俺はいつだってパンパンOKだ。


(そこは……アレだ。うん。男として? 女に恥をかかせるわけには、いかないし……な? ふふふ♡)


 一人、そんな妄想を膨らませては、鼻の下を伸ばして怪しげに微笑む。

 それにしても、いつの時代もパンダの赤ちゃん人気とは不動のようで、その勢いは凄まじい。周りを見渡せば、『パンパン』目当てで集まった人達で溢れかえっている。
 まぁ、そのお陰で美兎ちゃんとも密着ができると思えば……。この群集も息苦しさも、そう悪くはない。


「……美兎ちゃん。パンダ、見える?」

「うーん……。見えないよぉ〜」

「ここからの方が、見えるかもよ」


 そんなことを言いながらさり気なく肩に手を回すと、自然と俺の方へと抱き寄せる。


「あっ……。ふぅ……っん」



 ———!?!!?!



(ファッ……ツ!?!!?!)


 人混みに押されて思いの外密着する形になってしまった美兎ちゃんは、その苦しさからか、俺の胸にしがみつくとなんとも(なまめ)かしい声を上げた。
 その不意打ちに、ビクリと肩を揺らした俺はその場でピタリと動きを止めた。


「……あっ! 『パンパン』見えたっ! 『パンパン』可愛い〜!」
 

 パンパン、パンパンと無邪気な笑顔を見せながらも、卑猥な言葉で容赦なく俺の耳を攻め立てる美兎ちゃん。

 
(ま……っ、まさか、これは……っ! 言葉攻めっ!!?)


 ズキズキと痛み始めた股間を前に、一人その場で悶絶する。


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