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高校2年生、9月。
広い静かなコンサート会場にいる何人もの観客たちが
真っ白なドレスを身に纏った私を見つめる。
深呼吸して流れに身をまかせ音楽を奏でる。
「愛しい(かなしい)表情で弾くのもいいよね」
いつだったかみのりがそう言ってたっけ。
「透明感のある茜の演奏が好きだよ」
いつだったか長田くんがそう言ってたっけ。
愛おしい2人に支えられて
私は今日ここに立っている。
私がショパンの「エチュード op.10-3 ホ長調」を選曲したのはこのコンクールに挑戦すること決めた1年生の冬。
小さい頃からお世話になっているピアノの先生に「茜ちゃん、よかったらこのコンクールに出てみない?」と誘われた。
最後の1音を弾き終え顔を上げると観客席で涙を浮かべ大きく拍手する彼の姿が真っ先に目に入った。
弱い私よ さようなら。
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