あたしを撫でる、君の手が好き。
ふわふわ、落ちる。

放課後の教室。

机に伏せて眠る彼女の栗色の髪が、僅かに開いた窓から吹き込む風に揺れていた。

待ってろ、と言ったのは俺だけど。

夕暮れの迫る教室で眠っている彼女の無防備さが少し心配になる。


「るみ」

机の前に立って上から呼びかけてみたけど、スヤスヤと気持ちよさそうに眠っている彼女は起きそうもない。


「るみー」

さっきより少し大きな声で名前を呼んで、風に揺れる彼女の髪に手を差し入れる。

その髪は、今日も変わらず柔らかくてふわふわだ。

つい数ヶ月前までは、このふわふわに少しでも触れたくて。触れる度に、ドキドキと胸を高鳴らせていたのに。

こんなふうに、何の言い訳もしなくても触れられる日が来るとは思わなかった。

彼女の髪に触れる度にドキドキすることに変わりはないけど、触れたときに感じる気持ちは前までと少し違う……、と思う。

俺と付き合い出したって、事あるごとに富谷は「シロちゃん、可愛いよな」って騒ぐし。付き合ってることがバレてる部活仲間には「亜聡のカノジョ、目立たない子だったけど、実は結構可愛い」って言いふらされてるし。

俺に対するからかいの意味もあるんだろうけど、内心、結構複雑だ。

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