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君が一歩踏み出せるのなら


Ryuto Side

女たちを誑かして情報を入手するのなんて朝飯前だけど、
この前から来た子は女というより女の子だ。
まだ大学生だったらしい彼女は、
ただ宿命を受け止める整理をするためにここにいる。

健斗の作った飯が口に合うみたいで、
少しずつ食欲には回復の兆しが見えた。
でも、まだ少し居心地が悪いみたいだ。

そりゃあそうか、男が9人も一緒に暮らしてるなんて、むさ苦しいし怖いよな。
なぜだか俺は彼女のことが気になって。
気がついたらドアの前にいた。

コンコンとノックすると、
はいと小さい返事が返ってきた。

「あ、っと、今いい?」
天咲「はい、どうぞ」

椅子に座って本を読んでいたらしい彼女が、
俺に椅子を明け渡しベッドへ腰掛けた。

「調子、どうかな?」
天咲「体調は、だいぶ回復しました」
「そっか、よかった」
天咲「ご迷惑おかけしました」
「や、そんな迷惑とか思ってないし…」

それは、俺もみんなも思ってる事だと思う。

「ここの居心地とか、悪くない?」
天咲「居心地…ですか?」
「うん、ほら一応今はここに住んでるからさ、男ばっかだし、
 変に気遣ってたら申し訳ないなと思って」
天咲「いや、みんないい人だし…大丈夫、です」
「じゃあ、敬語やめてみて?」

さっきからずっと、敬語を使う彼女。
せめてもの距離の縮め方として、それを取り払いたいと思った。
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