御曹司は箱入り娘を初夜に暴く~お見合いしたら、溺愛が始まりました~
「うん。どうだい透くん」

「もしお許しをいただけるなら、私のマンションで沙穂さんと同居させてもらえませんか」

頭上で聞こえたハッキリとした主張に、力強い腕の中から彼の顔を見上げた。
父を相手にまったくひるむ様子のない顔つきにドキッと胸が鳴る。

過保護な父はさすがに眉をひそめた。

「ええ、ふたりで?」

「沙穂さんはご実家で大切に育てられてきたのでしょうから、今度はぜひ私の生活も知ってもらえればと」

透さんの真摯な態度に、父の表情は徐々に柔らかくなっていく。それでもまだ「そうだねぇ」と言葉を濁している。
お願い……お願い……。

「お嬢さんを傷つけるようなことはしません。きちんとケジメはつけるつもりです」

その台詞が、ついに父を落とした。
「そこまで言うなら」とうなずき、透さんの背中をトンと叩く。

「よし分かった。たしかに沙穂はうちの手伝いばかりでろくに外の世界を知らないままだ。いろいろ教えてやっておくれ。頼んだよ、透くん」

「はい」

無謀かとあきらめていたお願いを叶えてくれた彼をポーッと見つめ、私はドキドキする胸を抑えていた。
どうして透さんって、こんなに頼もしいんだろう。どんなときも助けてくれて、まるで王子様のようだ。
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