お見合い回避のために彼氏が必要なんです
見合い
22時。

仕事を終えて帰宅すると、まるで見計らったかのように、携帯が鳴った。

ルルルル……

画面には、ただ一文字「母」と表示されている。

はぁ……

絶対、ろくな話じゃない。

分かってはいるものの、無視すれば、また何度も掛けてくるのは目に見えている。

「もしもし?」

私がいい終わる前に母は言葉を被せてくる。

清香(さやか)? あんた、ちっとも帰ってこないけど、ちゃんと食べてる?』

はぁ……

また、ため息が漏れる。

「今から食べるとこ。何?」

『子供の頃、あんたと仲良かったミナちゃん、来週、結婚するんだって!』

そんな話だろうと思った。

「知ってるよ。で、何?」

『えっ、あんた、知ってたの? あ、でね、今日、ミナちゃんのお母さんに聞いたんだけど、ミナちゃん、婚活して決めたらしいのよ!』

「で?」

それも聞いたよ、本人に。

『何でも、30歳を過ぎると、婚活しても決まりにくくなるから、20代のうちにお見合いとかした方がいいらしいのよ』

「で?」

それも聞いた。

『だから、タカコおばさんにお見合い頼んどいたから』
 
「は⁉︎」

『タカコおばさんの会社の人で、ちょうど清香(さやか)にお似合いの年周りの人がいるんだって。紹介してくれるようにお願いしといたから、来週の日曜日、帰っておいで』

「はぁぁぁ⁉︎
 私にお見合いしろって言ってるの⁉︎」

冗談じゃない。

『だって、清香、ほっといたら、永遠に彼氏とか連れてこないでしょ? 私に似てるんだから、見た目は悪くないと思うんだけどねぇ』

言いたい放題だ。

「だからって、何でお見合いなの⁉︎ 大体、そっちの人とお見合いして結婚なんかしたら、仕事辞めなきゃいけないんじゃないの?」

『いいじゃない。どうせ、そんな残業だらけの会社、そっちで結婚したって、続けられるわけないでしょ』

うっ、
それは、そうかもしれないけど……


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