お見合い回避のために彼氏が必要なんです
レンタル彼氏
 週末、私は、詩織ちゃんの話を思い出して、レンタル彼氏を検索してみた。大勢の男性の顔写真がずらりと並んでいるが、多いのは大学生くらいの男性。

さすがに大学生を連れてくのはなぁ。

そんなことを思って閉じようとしたけれど、ふと思った。

条件付きで検索できるんじゃない?

私がこのシステムを開発するなら、絶対に入れる仕様だもん。普通のSE(システムエンジニア)なら入れるよね。

よく見ると《メニュー》というボタンがある。当然のようにタップしてみると、その中に条件検索のボタンがあった。私は、年齢28歳〜35歳、身長170㎝以上と入れてみる。すると、一気に表示される人数が減った。

「へぇ〜、学生アルバイト以外もいるんだ」

思わず、呟いて画面をスクロールする。

 しかし、1人の写真を見て、私の手が止まった。そこには、忘れられない彼によく似た目が写っている。

北村(きたむら)先輩?」

かつて、中学の先輩だった北村 祐輔(きたむら ゆうすけ)先輩によく似ている。優しくて大好きだった初恋の彼の面影は、私の胸の中をざわつかせる。

 でも、そのホームページの彼の名前は早川 透(はやかわ とおる)。記憶もあやふやだし、目元だけだし、他人の空似かな。大体、北村先輩が、東京に出て来てるとは限らないし、何より、成績優秀だった先輩が、そんなフリーターみたいなことをしてるはずがない。

それでも、会ってみたい。

その衝動は抑え難いものがあった。

料金は……

2時間で1万円かぁ。しかも、交通費、デート代は別途必要。

デート代は、お母さんに食事代を出してもらうからいいとして、1万、どうしよう。

出せない額じゃない。ただ、たかが2時間のために払うのは、もったいない気がする。

私は、しばらくその画面と睨めっこを続けた。



 勝ったのは、画面。負けた私は、ポチッとデート申し込みの画面へと進んだ。日時と場所は、来週の土曜日の昼頃、駅近くの割と名の知れたレストランを指定する。最後に確定ボタンを押した。

買っちゃった。

まさか、自分が、2時間とはいえ、彼氏を買う日が来るなんて、思ってもみなかった。私はしばらく、呆然と携帯を握りしめていた。


 それから、10分後、土曜は都合が悪いが日曜なら何時でも空いてるとの返信が来た。

どうしよう。

私は母にメールする。

〔日曜なら空いてるけど、土曜は都合が悪いみたい〕

母からの返信はすぐに来た。

〔夜の部だから、4時に劇場に着ければ大丈夫よ〕

それを受けて、先方に連絡をする。するとすぐにOKの返事が来た。私が今回のことの詳細をメールするのと入れ替わりで、契約内容のメールが届いた。1万円はクレジットカードから引き落とし、その他の必要経費は本人に支払う旨が記載されている。



はっ!!
お母さんに連絡しなきゃ!


 私は、母に待ち合わせ場所をメールする。母からは、即座に了解のスタンプが送られできた。
< 6 / 10 >

この作品をシェア

pagetop