夜空に見るは灰色の瞳
序章
めっきり日が短くなってきた今日この頃、薄暗いを通り越して真っ暗になりつつある道を、足早に歩く。

元々人通りが少ない道であることと、残業でいつもより帰りが遅くなってしまったこともあって、歩いているのは私一人だけ。

一定の間隔を空けて道の端に立つ街灯が、ちょっぴり不気味にアスファルトの道を照らすから、自然と歩調は速くなる。

せめて月明かりか、満天とは言わないまでも星でも見えていれば少しは心が安らぐのだが、生憎と見上げた空は真っ暗だ。

“今日は一日どんよりとした曇り空になるでしょう”との予報通り、朝から重たい灰色の雲に覆われていた空は、日が暮れてもなお雲に覆われている。

それがまた、街灯と街灯の間にある暗闇に、ありもしない恐怖を感じる一因になったりする。

恐怖に支配されそうになる気持ちを落ち着けるため、一つ息を吐いてから、見上げていた視線を進行方向に戻そうとした時、視界の端に不思議なものを捉えた。

いや、正確には、捉えたような気がした。
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