夜空に見るは灰色の瞳
3 ご機嫌が生む誤解
「叶井さん、今日は何だかご機嫌ですね」

「え、そう?」


女子トイレにて手を洗う私と、その隣で化粧を直している三永ちゃん。


「まあご機嫌と言うか、ここ最近お疲れな感じだったのに、今日は元気そうに見えますよ。何か良いことでもありました?」

「良いこと……」


パッと思い浮かんだのは、私に癒しを与えてくれた黒ウサギの姿で、モフモフとした手触りまでもが蘇り、思わず頬が緩む。


「ウサギってさ、可愛いよね」

「……ウサギ、ですか?」


あまりに話が唐突過ぎたためか、鏡越しに見えた三永ちゃんの顔が大変困惑している。


「ああ、えっと……知り合いがね、飼ってるウサギを、その……触らせてもらったの!それが凄く可愛くて――」


事実とは少し違うけれど完全に嘘でもないので、いつぞやのような大根役者にはならずに済んだ。
まあ多少はぎこちなくなったけれど。
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