酔える声の裏側〜イケメン声優に溺愛されちゃった!?〜
それからまた数日。

マカと佐伯さんは仕事のため、別室で話してるみたい。

私は今日一日あんまり関わっちゃいけないんだろうな。

そんな状況からか、御園ユウトは珍しく楽屋に来ないし。

1人寂しくソシャゲをしながら暇をつぶしていると、小野寺さんが入ってきた。

「あ、どうもお疲れ様です。」

「お疲れ様です。
マネージャーとして今後のことを確認しておきたいと思ってきました。」

「あ、事務所のことですよね。
佐伯さんは今後より広く活動できそうです。」

「ここに留まって活動するということですか?」

「はい。
あ...もう一方独立みたいな動きもあるんでしたっけ。」

「はい。近年、この事務所もだいぶ大きくなりましたので。分派が生まれるのは仕方ないことではあるんですが。」

「そちらは、どうされますか?」

「御園の心持ちとしては、佐伯さん次第といったところでしょうね。

とはいえ、実は以前お世話になったプロデューサーや監督などのスタッフは向こうに移られるようで...あまり軽んじて考えられるものでもないなと。」

「あー...色々、縁って大事ですものね...。
それに、大元だからって、安心出来るかといったらそうじゃないでしょうし。」

「そうなんです。
まあ、流れでは現在有力ではありますけど。今後どうなるかも分かりませんし。
御園にとってはどちらがいいんでしょうかね...。」

「...あの、御園さんって元から俳優志望なんですよね?」

「経歴ではまだ俳優の筋が強いでしょうね。

でもまあ...私の邪推ですけど、知名度を得られるなら手段を選ばないようです。

どんな仕事も、彼なりに精一杯引き受けてはいますし、それなりに評価も得られるのが強みですかね。
前々からの人脈の影響もあるでしょうが。」

「私が色々言える立場ではないでしょうけど、今の御園さんはなんだか楽しそうです。前と比べて丸くなったみたいですし。」

「はい。」

「それに、自分がこの芸能界で有名になれたのも自分の力だって思ってるみたいですし。逆に、そういう自己中心的な考えって、自信って捉えてもいいかなって。」

「自信...ですか。」

「はい。それに俳優に限らなくても歌とか、ダンスとか色々やられてるみたいなんで、そういう方面からのアプローチだったら、磨けそうなプロデューサーがいるので。」

「聖塚さんですよね。
彼女がついてくれているのはすごくありがたいと思います。
僕も、彼女のファンなので、嬉しいです。」

「そうなんですね。
じゃあ、あまり迷う必要はないかなと思います。」

「はい。
第一、向こうにつくと、人事が変わるので僕が御園についていられるかも微妙ですし。」

「そ、それはそれで、小野寺さんの負担も減る...んですかねww」

「そうですね、それは楽ですけどww
でも、このぐらいが1番充実してるかなと思います。手はかかるけど、かわいいやつですよ。」

小野寺さん...。

御園ユウトとはほんと、信頼し合っていい関係なんだろうな。

だからこそ、不安っていうのも分かる。

でも、

まだ未だに2人が喧嘩する声とか楽屋まで聞こえたりするけど、仲良いんだなって言って、佐伯さんがいつも微笑ましそうにしてるから...。

なんだかそれがなくなっちゃうのも寂しいし、

できればずっとこのままでいたい。

今回はそういう考えでひとまず正解な気がする。
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