キミと、光の彼方へ。
邂逅
高校生にもなって異性の幼なじみと登校するなんて憧れの何ものでもないと思う。

それが、実際に自分の身に起きていて、毎日がふわふわしているなんて、改めて考えても自然と頬が緩んでしまうものだ。

私の隣にはいつも、幼なじみの武波海里(たけなみかいり)がいる。

産まれた病院は一緒で日付が2日違い。

同じ保育器に入れられて、隣同士で足をバタつかせ、よく眠り、よく成長したみたい。

保育園も小学校も中学校も高校も、ずっと一緒で、クラスもほぼ離れたことがない。

そもそも島に住んでいて、人口が多い訳でもなく、学校自体少ないから、当たり前と言われれば当たり前だけど、それでも嬉しかった。

私の幼なじみは勉強も運動も良く出来、高校はバカな私を置いて島を出るだろうと思っていたのだけれど、「なんか色々と心配だから」と島を出なかった。

その色々に私が含まれていることを信じたい。

いや、もうがっつり信じてしまっている。

だって私は......海里が好きだから。

ずっと一緒にいて好きにならない理由が見つからない。

海里はクールでちょっと分かりずらい所もあるけど、すごく真面目で時に優しくて、とにかくカッコいいんだ。

そんな幼なじみを、私は朝の通学時間だけでも独占出来て、それはそれはもう幸せ。

しかし、だ。

海里は私が海里を好きだということを気づいていないようだし、それに海里は私を1人の女の子として見ていないと思う。

現に今も...。

海里は私のスクバと自分のリュックを入れた自転車のかごばかり見て、後ろを歩く私を見てはくれない。

話しかけようにもかけられないし、微妙な距離感で、私と海里の世界は成り立ってしまっている。

爽やかな潮風と海の香りを感じながら、お互いに特に話すこともなく、ただ時間と空間を共有して朝の通学を終える。

無言でも心地良いのは、幼なじみという関係に甘んじた都合の良い感情だと思う。

それ以上にも以下にもなることなく、変化を拒みながらずっと一緒にいることを選ぶ。

そんな私は少し、いや、かなり卑怯かもしれない。


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