理花はそんなことされた経験がなく、恭吾が出て行ったあともしばらく玄関でうずくまり小さく悲鳴を上げていた。

その日の理花はあんなに飲んでいたお酒を飲みたくならず、お風呂掃除をしながら鼻歌まで歌っていた。
そして、久々にクシで自分の髪をといた。半年以上前にパーマをかけたきりの髪は肩甲骨を覆うほどに伸びており、ほとんど手入れをしていなかったからバサバサに広がっている。
理花は以前使用していた整髪料を取り出しなんとか広がらないように髪を整えた。

「恭ちゃん昼に帰って来るって言ってたけど何時頃だろ?」

無意識に恭吾のことばかり考えていた理花は独り言を呟きながら時計とにらめっこしていた。時計はもうすぐ13時になろうとしていた。

しばらくそうしていた理花は13時半を過ぎようとするころには高揚していた気分もすっかり冷めていた。

(そっか…私なんかの所に戻って来るはずないよね…)

そう思い至ると、恭吾の帰りを心待ちにしていた分落ち込み目からは涙が絶えず流れ出る。

時計は15時を示し、放心していた理花にはもうすっかり期待する気持ちはなくなっていた。
そこへ慌てた様子の恭吾が勢いよく玄関へ入ってきた。

「ごめんっ!レポート提出忘れてて学校でやってたんだ…マジで遅くなってごめん。」

目の前で必死で言い訳をする恭吾を見て驚きとともに理花の目からまた涙が流れ出ていた。