冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
第三章 激情と庇護欲のはざまで
なかなか寝付けぬ様子の彼女は、大きな黒目がちの瞳を揺らしてふるふると長い睫毛を揺らす。

そこには俺を意識するために生まれた羞恥心だけでなく、少なからず今宵初めて体験することになる知らない感情への期待感が見て取れた。

それは長らく感じられなかった深い睡眠への期待か。……それとも。

『お願い、します』

ベッドに横になったまま澪は両手をこちらへ差し出す。
頬を染めて抱きしめられる覚悟を決めた彼女を、たまらずに俺は強引に腕の中に閉じ込めた。

勢い良く胸板に飛び込むはめになった彼女が俺の背中に両腕を回すより先に、弾力のあるやわらかなものが形を変えて、その衝撃を和らげる。

薄々気がいていたが、まさか男の前で下着をつけていないなんて。
過保護に育てられた箱入り令嬢には誰も何も教えてこなかったのだろうが、無防備にもほどがある。

ぐっと感情を押し殺そうとした時、『ふ、ぁ』と彼女からはまるで感じたような甘い声が漏れた。
それだけで頭の奥が甘く痺れ、腹の底が燃えるように熱くなる。
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