モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
ヒロインの取り巻きをやめました
「本日より、フィーナ・メレスを停学処分とする」

 この春入学したばかりのアルベリク王立学園の校長室で、私は突然そう告げられた。
 今は十月。季節は秋。まだ入学してから半年しか経っていない。なにか悪さをした覚えも、校則と破った覚えもないのに、これはいったいどういうことなのか。

「えーっと……なぜでしょうか?」

 気難しそうな顔をしている校長に、私は首を傾げて問いかける。
 朝早く校長室に呼び出された時点で、なにかあるとは思っていたが、まさか停学処分をくらうなんて予想外だ。

「……あまりこのようなことを私の口から話したくはないのだが、ルメルシェ家から連絡があってな」
「ルメルシェ家というと、エミリーの?」

 私の知り合いであり同級生の、エミリー・ルメルシェ。この名前が出た瞬間、私は嫌な予感がした。

「そうだ。君の学費はすべてルメルシェ家が負担し、この学園もルメルシェ家の推薦で入れたのだろう」
「まぁ、そうですけど」
「ルメルシェ家に恩のある君が、入学する際に交わした〝約束〟を放棄したことに、ルメルシェ家はたいへん腹を立てているみたいでな。君の分の今後の学費を納めないと言ってきたのだ。実際に、期日が昨日までだった後期分の学費は支払われていない。君の実家のメレス家にも連絡を入れたが、自分たちで学費を払うのは難しいと言われてな。……本来ならすぐに退学となるところだが、君のご両親がルメルシェ家を説得したようで、今後の態度次第ではまた援助を再開すると思い直してくれたようだ」
「はあ……」
「よって、学費を納められるまでは停学処分とさせてもらう。最長でも期間は三月の終業式のあとに開かれる学年末パーティーの日まで。その日までに後期分と来年度の前期分の学費が支払われなければ、残念だが退学処分とさせてもらう」

 あまりにくだらない停学の理由に、ため息をついてしまった。というか――。

「待ってください! 停学中の学費も支払わなきゃいけないのですか!? 校長先生ったら鬼だわ!」
「当たり前のことだ。しかも君は寮に入っているだろう。寮生は学費に寮の費用も一緒に入っているんだ。停学中も寮で過ごすのなら尚更当然のことだ」
「え? 私、屋敷に戻れないのですか?」
「君のご両親が停学中も寮で生活することを希望したんだ。あ、そういえば、ご両親から君宛に手紙を預かっていたんだった。詳しい事情は、そこに書いてあるんじゃないか?」

 呆れたように言う校長が、机の上に置いてあった一通の手紙を差し出してくる。
 私は手紙を受け取ると、その場ですぐに封をビリビリと音を立てながら開けた。

 手紙の内容は、主に私がエミリーを怒らせたことへの叱責。加えてルメルシェ家から見放されるとメレス家の立場が危うくなることがぐちぐちと綴られていた。
 どうにかしてエミリーの機嫌を直すようにと、そのために王都から離れた屋敷でなく、寮で過ごすことを私に強制したようだ。ほかには「せめて停学中の学費を少しでも安くしてもらえるよう交渉しろ」、などの無茶ぶりも書かれていた。
 
 もし私がこのまま退学となった場合、後期分の学費は私の両親が支払うことになる。その際に経済的打撃が軽くなるよう、こんな無茶ぶりをしてきたのだろう。

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