モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
モフモフと猫好き
ほかの生徒たちは授業を受けている時間だが、停学となった私はまだ空が青いうちに寮へ戻ることになった。
 アルベリクの学生寮は、学園から歩いて十五分ほどの場所にある。玄関の奥に食堂があり、食堂を中心に左右に渡り廊下がある。右が女子棟、左が男子棟になっていて、男女が一緒になる場は食堂のみとなっている。基本ひとり部屋で、部屋も広く快適だ。
 
 私はまず部屋に戻り、先ほど校長から受け取った課題を机の上に広げた。
 停学中も勉強は必須とのことで、いろんな教科のテキストが目を覆いたくなるほどどっさりと机に広がっている。たいへんそうだが、なんとかやるしかない。特別課題もあるし、こっちは空いている時間にさっさと片付けてしまおう。

 両親には現状を知らせる手紙を書いた。エミリーとの仲について触れられるとバツが悪かったので、エミリーのことはほとんど書かず、学費免除の交渉が成立したことをとりあえず知らせることにした。

 ――次は、特別課題をどうするか考えないと。

 倉庫の修復は明日にでも始められるだろう。課題と一緒にもらった学園内の地図を見て、迷わないよう倉庫の場所を確認しておくことにした。
 むずかしそうなのはもうひとつの課題だ。……寮生を盛り上げる企画って、なにをしたらいいのか。
 寮生同士のコミュニケーションを広げることが目的らしいけど、学園で顔を合わしているひとたちと寮でまで深く関わる必要が果たしてあるのだろうか。
 たしかに寮には学年やクラス、身分なども関係なくいろんなひとがいるが、みんな寮でくらいひとりでゆっくりしていたい気もする。私がそうだから、そう思うだけかもしれないけど。
 
 しかし、理事長に与えられた課題だからやるしかない。
自分でなにかを企画すること自体が初めてで、なかなかいいアイディアが浮かばないまま時間だけが過ぎていった。
 
「……だめだ!」

 いくら悩んでも頭の中は空っぽのままで、限界がきた私はおもわず声を上げる。
 気分をリフレッシュするために、私は一旦部屋を出ることにした。
静まり返った廊下を歩き、私は食堂へと向かった。食堂は私のお気に入りの場所だ。
この寮には寮母のマルトさんが常駐しており、食事もそのマルトさんが作ってくれている。マルトさんは元々王宮で料理人をしていたようで、料理の腕は一流だ。私は食堂でマルトさんの作ったご飯を食べるのが、ここへ来てからいちばんの楽しみになっていた。

 学園にも食堂はもちろんある。使われる食材も高価で、貴族にふさわしい豪華なメニューが用意されているが、そのぶん割高だ。
 それに比べて寮の食堂のメニューは、使っている食材などは豪華とはいえないが、味のクオリティの高いものが多い。庶民から貴族まで幅広く受け入れられる食事を心がけている、と以前マルトさんが言っていた。

 寮の食事は平日に朝食と夕食の提供。休日は毎食、希望者のみに提供している。
 パンやサンドイッチなどの軽食は購買式で、小腹が空いたときにいつでも食べられるようになっていて便利だ。
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