異能者達の宴~夢の競演特別編~
第一章

哲平

走る。

夜の闇をひたすら走る。

「とんだ里帰りになってしまったな…!」

毒づきながら、俺は路地裏へと身を滑り込ませた。

既に身につけている衣服はボロボロだ。

ここまでの苦戦は、1号を相手にしたとき以来かもしれない。

「大丈夫か、黛さん」

物陰から様子を見ながら、俺は路地裏の奥に入り込んだ黛さんに声をかけた。

「私は大丈夫。でも…」

そう言った彼女の表情は曇っていた。

…彼女の膝元には、まだ幼さの残る少女が寝かされている。

額に汗を浮かべ、時折苦痛に表情を歪める。

「まずい事になったわ…私達の中で唯一ヒーリング(回復能力)をもつ彼女が傷を負ってしまうなんて…」

「……」

機関の開発した薬品によって超能力を発現させられた者…『覚醒者』。

その機関を裏切り、逃避行を続ける俺達にとって、追っ手の襲撃は日常茶飯事であったが、今回のような事態は始めての事だ。

「覚醒者三人を相手にあの強さ…奴は化け物か…!」


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