最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
診察室をあとにして、会計を待つためロビーに向かって歩く。

慧さんには性別が確定してから教えたほうがいいかな? でも、そろそろ本格的に名前も考えなきゃいけないし……。

あれこれ思案しながら、バッグに母子手帳を入れようとして落としてしまい、「あっ」と小さな声がこぼれた。

屈んで手を伸ばそうとしたとき、私よりも早く誰かがそれを拾い上げる。目線を上げると、ストレートロングの髪を揺らした綺麗な女性が、ふわりと微笑んで手帳を差し出した。


「どうぞ」
「すみません! ありがとうございます」


心優しそうなその女性にお礼を言うと、彼女はふたり分並んで空いているソファのひとつに腰を下ろした。

私も待つ場所は同じだ。やや混み合っているので、なんとなく隣に座らせてもらう。

彼女は横から見ても本当に美人だ。年は私と同じか、少し上くらいかな……と推測していると、その女性が穏やかに話しかけてくる。


「今、何カ月ですか?」
「六カ月です」
「じゃあ、もう性別がわかったり……?」
「はい。たぶん女の子じゃないかって」
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