最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
「関係ないって……でも、もしかしたら今回のことは──」
「嘘をついたことは謝る。ただ、夫婦だからって勝手に過去をほじくり返されたくはない」


冷たく鋭い声で遮られ、私は〝菫さんも関係しているかもしれない〟という言葉を飲み込んだ。慧さんが言うことも一理あって、力無く肩を落とす。

やがて彼は腰を上げ、暗然として俯く私の隣がからっぽになる。


「……この話はもうやめよう。自分がどんどんみっともない奴になる」


慧さんは自嘲気味に言葉を吐き捨て、私と目を合わせないまま自室のほうへ向かってしまった。

静まり返ったリビングでひとり動けずにいると、お腹の中で〝大丈夫?〟というようにポコンと軽く蹴られた。

丸いお腹にそっと手を当て、眉を下げて笑みをこぼす。


「こんなふうに言い合いたかったわけじゃないのにね……」


ひとりごちると、瞳にじわりと熱いものが込み上げた。

気持ちがすれ違うときは、こうもうまくいかないものなのか。夫婦として胸を張れるようになったとはいえ、すべてをわかり合うのは難しいのだと思い知る。

初めてのケンカは、想像以上にダメージが大きい。悔しさや悲しみでいっぱいで、ぽろぽろと涙がこぼれた。


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