背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
計画的?……美月
総勢八人を乗せたエレベーターは最上階で停まった。

 康介さんに続き、ぞろぞろと厚いカーペットの上を歩く。
最後尾は彼だ。


 康介さんが、明らかに他の部屋と重圧感の違うドアの前で立ち止まった。
 ドアの横にカードキーを差し込むと、ピーと言う電子音と同時にドアが開いた。

 私の胸は、ドキドキと大きな音を立てている。

 彼の両親に続き、私も部屋の中へと足を踏み入れた。


「わあっーー」


 思わず、声を上げてしまった。
 想像していたより、はるかに広いリビングが目の前に広がった。

 大きな窓からは、遠くに海までも見渡せる。

「どうです? 美月さん」

 彼の父のが、伺うように私を見た。


「凄いー! 素敵です」

 両手を合わせて部屋を見渡した


「よろしかったら、見て回って下さい」


 康介さんが、品の良い笑顔を向けてくれた。


「はい!」


 私は、すっかり見合いの事を忘れ、康介さんに部屋を案内してもらう事にした。


 大きなテラスからは、遠くに海までも見える。勿論、寝ころべるようなソファーもあり、ジャグジーまでもある。

 部屋の中に戻ると、バスルームへと案内される。大理石の洗面台がピカピカと輝き、浴室のドアを開けると、薔薇を散りばめた浴槽というのを初めて目にした。

「うあーっ。凄いー」

思わず歓声を上げたが、鏡に映った自分の着物姿に、風呂に入る事などありえない現実を知った。

 次は、寝室だ。見たこともない広いベッド。
 思わずダイブしてしまいそうになり、そっとベッドのスプリング具合を確認する振りをしてごまかした。
 あー、一度でいいから寝てみたい。


 そして、リビングから続いているダイニングルームへと入った。

 ダイニングテーブルは、ゴージャスだが品があり、一目で惚れこんでしまった。


「なんて、重みのあるデザインかしら…… こんな、テーブルで食事出来たら、楽しいでしょうね……」

 ふと、そんな言葉が漏れていた。


「そうですか。ふふっ」

 康介さんが、意味ありげに小さく笑って、目を向けた先へ、私も目を向けた。
 そこには、こちらを見ている彼の姿があった。
 私と目が合うと、彼はすぐに目を逸らしてしまった。
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