エレベーターで雪哉と鉢合わせた次の日、出社して社内掲示板と通達の一斉送信メールを確認したら、確かに派遣で通訳が来ることがどちらにもしっかり明記されていた。

 顔写真こそなかったが、簡単なプロフィールと通訳3名の短い挨拶文が掲載されており、逆に何故気付かなかったんだろうと不思議に思って、朝礼までの間に同じメールを何回も読み返し続けた。

 自分はどうしようもなく、間抜けている。

 けれどディスプレイの中の情報とそれに伴う現実を眺めているうちに、愛梨には罪悪感が沸き起こってきた。それは雪哉にではなく、弘翔に対して。

 もちろん雪哉にも思うところがあるが、どうせ社内で会う事などほとんどないだろうし、会っても愛梨には話せることはない。それよりも、恋人である弘翔の事を考えてしまう。

「弘翔。あのね、話があるの」

 先日約束を反故にしてしまったので、週末に改めて食事に出掛けた。比較的大食いの弘翔とピザが食べ放題のイタリアンで空腹を満たし、ブラブラとウィンドウショッピングをして、そのまま弘翔の家に遊びに来た。

 コンビニで買ったスイーツを綺麗に平らげた頃、急に正座になって真面目な顔をした愛梨を見て、弘翔は眉を顰めた。

「怒らないで、聞いてくれる…?」
「えー。どうしようかなー? それ俺が怒るってわかった上で聞いてるよなー?」

 言ったら怒るかもしれない。そう思ったからあらかじめ予防線を張ったのに、弘翔は遠慮なくその予防線を乗り越えてくる。
 露骨に不安そうな顔をした愛梨の顔を見て、弘翔はぷっと噴き出した。

「嘘だよ。怒らないよ」
「…ほんと?」

 そうは言っても怒られそうな気がしたが、弘翔は再度『怒らない』と約束してくれた。