センチメンタル・ジャーニー ~彼を忘れるための一人旅
1

早朝に 家を出たから 

成田空港には 予定より早く 到着した。


マレーシア航空の カウンターで

チェックインして 荷物を預けて。


出国の前に 何か 食べよう。

昨日から 食欲は 全くないけど…


手荷物だけになった 私は歩き出した。


と言っても 何も 食べる気には なれずに。

カフェで ホットコーヒーとクッキーを選んで。


搭乗までは まだ 時間があるから。

私は バッグから 文庫本を 取り出す。


『悲しみよ こんにちは』

何度も読んだ サガンの小説。

もう一度 読んでみたくなって…

旅のお供に この本を 選んだけど。


ページを開いただけで 目の上を 滑る文字。

こんな気持ちで 集中なんか できる訳がない。


心に浮かぶのは 昨日のこと。

私の部屋を 出ていく奏斗の 後ろ姿…





< 1 / 57 >

この作品をシェア

pagetop