「裕生、聞いて、好きな人ができたー」

 ちぇ、なんだよ。

 帰りが遅いと思って心配してたら、ただいまも言わずに、いきなりなんの報告だよ、まったく。

「2年の先輩で、田所さんっていうんだけど、もうかっこよくて、優しくて、バタフライもすごく速くて……」

 沙希姉ぇが興奮すればするほど、おれの心はどんどん冷めていく。

「で、その人が『安井は頑張り屋だよな』だってー」

 そう言って、沙希姉ぇは、蕩けそうな顔で笑った。

 ったく、人の気を知らないで。

「今、忙しいから」

 おれは勉強を口実に、「もう、冷たいなー」と文句を言ってる沙希姉ぇを部屋から追い出した。

 2歳年上の沙希姉ぇ。そうやって、また、おれを置いてけぼりにするんだ。

 好きな男ができただって?