強引な無気力男子と女王子
 「さっきから真紘そればっかりじゃん」
 そう言って少しシュン、とした雰囲気になった悠理を見て私はグッと言葉に詰まる。
 ・・・少し冷たすぎたかな?
 「でも、重いから。私潰れそう」
 「潰れるわけないじゃん、人間なんだから」
 ・・・それはそうなんだけど!
 悠理に思わぬ正論を返されて、なんだかこっちがおかしな人みたいになってしまった。
 なんか悔しい。
 「ともかく・・・!」
 私が再び反論を試みようとしたとき。
 「ゆ~う~り~・・・」
 誰かの呻くような声がしたと思ったら、急に肩から重みが取り除かれた。
 ・・・まさかこれは。
 おそるおそる後ろを見るとそこには鬼の形相をした香くんが立っていて、悠理の首根っこを掴んでいた。
 来るぞ。
 「人に迷惑をかけるなぁ!!!」
 ほら来た。
 悠理に本日何回目かの雷が落ちた。
 そのまま悠理は香くんに引きずられてリビングを出て行った。
 「・・・怖かった・・・」
 「大丈夫か?」
 「あ、はい」
 先ほどの衝撃がまだ残っていてなんとも気のない返事をしてしまった。
 ・・・それにしても香くん、角生えてなかった?
 本当に怖い。
 私も気を付けないと。
 一人でそんなことを思っていると。
 「ねぇ、真紘」
 「どうしました?」
 連音さんに声をかけられて現実に引き戻される。
 「悠理とペアになる気はない?」
 「へ?」
 ペアとは一体何だろうか。
 「まだやったことはないんだけど。今日、真紘の撮影に悠理が乱入したよね?そのときの悠理の表情がいつもより良くて、なんか乗り気みたいでね。真紘もリラックスしてたみたいだし。だからお試しに悠理とペアを組んでほしい」
 連音さんは分かりやすいように噛みくだいて説明してくれる。
 「まあ、拒否権はないんだけど」
 ・・・今、ヤバいことが聞こえたのは、気のせいだろうか?
 「俺、やるよ」
 「うわ!びっくりした・・・」
 後ろから急に聞こえてきた悠理の声に少なからずビビる。
 気配消さないでよ・・・。
 いつの間に戻ってきたのだろう。
 「そう?良かった。真紘も良いよね?」
 「・・・分かりました」
 良いよね?って聞いても拒否権ないってさっき自身で言ってたくせに。
 でも、断る理由もさしてなかったので、私は連音さんの提案(?)を承諾したのだった。
 
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