強引な無気力男子と女王子
 「‥‥‥大丈夫。私はどこにも行かないよ」
 気づけば私はそう言っていた。
 ‥‥‥なんか今のって‥‥‥。
 「なんか今のって、カップルみたいだね」
 私が気づいた一秒後に、悠理がその内容を口にした。
 出来れば触れないで欲しかった!
 顔が熱くなっていく。
 「忘れて!」
 「ヤダ」
 そう言う悠理はもういつものマイペースな悠理で。
 さっきまでのおかしさなんて欠片も見せなかった。
 ‥‥‥悠理、大丈夫、だよね‥‥‥?
 
 ーガチャ。
 「あっ!真紘、遅いよ!瀬戸くんも!」
 扉を開いた瞬間に、日葵の元気な声が聞こえてくる。
 日葵は良い笑顔で。
 駿樹さんもそんな日葵を見て柔らかく笑っている。
 「仲直り、出来たみたいだね」
 「うん!真紘、ありがとう!」
 「私は何もしてないよ」
 でも、親友が彼氏と仲直り出来てよかった。
 やっぱり、日葵にはケンカしたときの沈んだ顔より、今の明るい表情の方が似合う。
 「‥‥‥あ、そう言えばどうして二人はケンカしたの?」
 これ、結構興味あるんだよね。
 はたから見ても恥ずかしくなるぐらいラブラブな二人。
 私が知る限りでは、二人がケンカしたなんて聞いたことない。
 「それは駿樹が悪いんだって!」
 「それは日葵が悪いんだよ!」
 二人の声が重なって聞こえた。
 「「息ぴったりじゃん」」
 そう二人に突っ込んだ私と悠理の声も重なった。

 
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