強引な無気力男子と女王子
 「写真多っ」
写真展についてからの第一声は綺麗だとかすごいとかではなかった。
 「真紘そこ〜!?」
そう言って日葵はカラカラと笑う。
 「でも多くない?」
「多いね〜!なんだかワクワクしてきちゃった!」
「はしゃぐのは良いけど、周りに迷惑かけないでね?あと、私迷子コーナーに呼び出されるのも嫌だから」
「真紘お母さんみたい」
仕方ないよ、この前一緒にショッピングモールに行ったときもはぐれたんだから。
 あのときは、日葵から泣きながら電話かかってきたよなぁ‥‥‥。
 「真紘は、今日は私の一日彼氏だから、ずっと一緒に回るんだよ?」
 お母さんの次は彼氏ですか。
「それ私と二人だけのときは言っていいけど、駿樹さんの前で言わないでよ?もし言ったら、私真面目に駿樹さんに殺されちゃうから」
逆に真面目じゃない殺され方ってなんだって話だけど。
 「駿樹は人殺しなんてしないよ〜?」
「日葵の前だからじゃな‥‥‥」
「真紘このポスター見て!」
おい、日葵まで私の話をさえぎるのか!
 なんなんだ今日、これでさえぎられたの三回目だぞ!?
 「真紘見てってば!」
「はいはい、何?」
「この人!この人さっきの人じゃない!?」
日葵があまりに必死になって言うから、ポスターに目を向ける。
 ポスターの上の方には、“NEW FACE”と書いてあって、その下にはまだ記憶に新しい人物の写真が印刷してある。
 「この人って、‥‥‥さっきの逆ナン撃退男?」
「そうだよね!?“NEW FACE”ってことは、新しいモデルさんかなぁ?」
「そんなとこだろうn‥‥‥」
「あーーーー!」
四回目!
 「何?」
突然の日葵の大声に耳をふさぎながら、日葵に質問する。
 「この人、瀬戸悠理じゃん!」
‥‥‥‥‥‥‥‥。
 「‥‥‥瀬戸悠理ぃ?」
しばらくの沈黙の後、私の口からはなんとも間抜けな声が出た。
 「‥‥‥誰?」
「真紘、同じ学校だよ!?同級生だよ!?本当に知らないの!?」
日葵がものすごい顔で詰め寄ってくる。
 「でもさ、同級生の顔と名前と全部覚えてる人いないと思うよ?」
 それに、私ら通う学校ってそれなりのマンモス校だし。
 「瀬戸悠理知らない人なんて同じ学校の子の中にいないよ!」
いるよ、ここに。
 「まあ有名な理由は大体わかるけど」
「だったら話が早いね!」
なんせあの容姿だからなあ。
 女子がほっとかないだろうね。
 そういう意味ならば、男女逆転するけど日葵も有名人だよね。
 ‥‥‥不本意だけど、私も女にモテる女としてある意味有名だよね。
 「早く回ろうよ」
「そうだね」
日葵に言われてポスターの前から動こうとしたその時。
 一ガシッと誰かに腕を掴まれた。
 「日葵、どうしたの?」
日葵が早く行こうって言ったのに、腕を掴むとはどういうことだ。
 しかも地味に痛い。
 「ちょっとどうしt‥‥‥」
「ねぇ、君、モデルに興味ない?」
 五回目!?
 誰だよ今度は!?
 イライラして、後ろを見る。
 ‥‥‥誰こいつ。
 「あのー。離していただけませんか?」
あと誰ですか?
 私の内なる疑問を見透かしたかのようにその人物は名刺を差し出してくる。
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