ONLY YOU～過ちの授かり婚～

取引

池袋駅東口駅から徒歩圏にあり、緑の多いグリーン大通り沿いにある「帝和銀行」池袋支店。

此処が我が会社の『宝和薬品』のメインバンク。
今日も父と山田支店長を訊ねた。

支店長室。

「そこを何とか…」
父は頭を下げて、目の前に腰を下ろす山田支店長に融資継続を頼み込む。
隣に座る私も頭を下げた。

銀行と言えども民間企業。
融資を申し込んでも、稟議が通りやすい時期と通りにくい時期があった。
今は三月。決算直後。
銀行マンも今の時期はホッと胸を撫で下ろし、貸出に積極的な雰囲気はなかった。

「申し訳ないが・・・宝和さん…お引き取り下さい」

山田支店長は必死に頭を下げる私達親子を冷淡にあしらった。

「山田支店長！！」


先週、父は山田支店長に言われ、銀座の老舗料亭で接待し、その時は酒も入って上機嫌で『考えよう』と色よい返事を貰い、親子で安堵していたのに。

また、ふりだしに。

私達は支店長に振り回されていた。