「犬を飼う? のあが?」
「麻ちん、違う。色々違う。犬にして下さいって言われたんだよ」
翌日、私は麻ちんに相談した。
泉くんとひょんな事から一緒に帰った事とか、泉くんがした提案とかを話すと、初めは真面目な顔で聞いていた麻ちんが途中からバンバン机を叩き出した。
「お疲れ! お疲れのあ!」
「笑い事じゃないよ麻ちん。職員室で先生達からの生温い視線、居心地悪いったら」
「で、どうするの?」
「ん?」
「泉くんだよ。犬にするの?」
「しないよ。そんなの体のいいパシリじゃない」
「えー。してあげればいいのに。面白い子じゃん」
「他人事だと思って。そんな気軽に言わないで」
「いいなぁ。私も可愛いイケメンワンコが欲しい」
「犬にはしないったら」
「でも、泉くんの言う事も一理あるんじゃないかな」
途端に麻ちんは顔を寄せて言う。
「のあの男嫌いは筋金入りだからね。少しでも克服するっていうか。男子の良い所もその泉くんって子が教えてあげられたらいいな、とは思う」
「麻ちん……」
にっこり笑うと麻ちんは、「さーて、お昼買いに行くか!」と言って立ち上がった。