「さっきの人……」
2人で旧校舎を出て、私は尋ねた。
「『翔太先輩』って、呼んでたけど……」
「ああ、中学のサッカー部の時の先輩です」
「サッカー?」
「俺、中学までサッカーしてて。翔太先輩は早くからレギュラーやってて、色々面倒見良くて、世話になって。憧れてたんですけど」
「けど?」
「最後の試合で怪我しちゃって。辞めちゃったんです。サッカー」
「そうなんだ」
「気になる?」
「え?」
「翔太先輩の事」
私の方を向いてそう尋ねる泉くんに、私は眉を寄せてみせた。
「気にならない。すっごく失礼な人だと思っただけ」
「はは! のあ先輩が人にあんな風に言い返してるの初めて見た」
「笑う所じゃないんだけど」
「すみません。俺、口じゃ翔太先輩に敵う事なかったから。すごいな、って思って」
「だって、腹立つじゃない」
「のあ先輩の負けず嫌いなとこ、俺好きですよ」