きっともう恋じゃない。
色のない恋





「あ? 誰これ」


拍子抜けなことに、新見くんからは一切音沙汰がなかった。

スクーリング最終日の晩なんて、いつ連絡が来るかとずっと身構えていたのに。


明後日から試験という時になって、やっと初めての連絡が来た。

よりによって、薫が携帯を持っているタイミングで。


「にーみいぶき? 知らねえ。姉ちゃんこれ誰だよ」

「学校の知り合い……知り合い?」

「いや、自分のことじゃん。知り合いったってこれ、おかしいだろ」


床を這いずってわたしの脇まで来ると、薫は携帯の画面を突きつけてきた。

近過ぎて見えない文字を遠ざけて、届いたメッセージを目で追いかけた瞬間、持っていたペンを落とす。


「はあ!?」

「声でっか。なにこれ、久野ちゃんの声聞きたい〜〜〜って」

「わ、わたしが聞きたいよ!」

「え、こいつの声を?」

「そんなわけないでしょ」


かおるを見なくてもわかる。

絶対に面白いものを見つけたって顔をしてるんだ。


「まおちゃんには言わないで、ね」

「やましいことがあんの」

「そんなのない。ないけど……」


まおちゃんに何か言われることが怖いんじゃない。

何も言われないかもしれないことがこわい。


こんなこと、今まで一度もなかった。

まおちゃんには知られたくない、お願い、と頼み込むと、ここまでわたしが言うとは思っていなかったのか、薫はくちびるを尖らせた。


「そんなん言うなら消せばいいじゃん」

「だって、明後日には顔合わせるし、後期の授業だって同じだもん」

「卒業するまで隠せるん? それまで無視すんの?」


隠し事を共有させる心苦しさを謝ると、そうじゃないだろって薫が怒り出す。

まおちゃんとのことでも散々薫を巻き込んできた。

また面倒を抱え込んで、と呆れられることも覚悟していたけど、怒られても今はどちらとも言えない。


「姉ちゃんのそういうとこだよ」


なにが、とは言わなかったけど、続く言葉はわかってる。

わたしのこういうところが、薫は嫌いなんだって。

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