きっともう恋じゃない。
ふたりの恋





無言のまおちゃん……じゃなくて、眞央に家へと招き入れられて、久しぶりに部屋に入る。

家自体はおばさんに呼ばれて何度も出入りしているから、香りも物の配置もすっかり馴染んでいるけど、眞央の部屋に入るのは緊張する。

小さい頃はお互いの部屋の行き来をよくしていたのに、いつの間にかわたしがこの部屋に来ることは稀になっていたし、眞央が寮で暮らすようになってからは近付くことすらなかった。


寮には寮の家具があるからと、部屋は物で満ちている。

でもよく見渡すと、棚の中身や机の上の物はやっぱり少し寂しい。


眞央にコップを取ってきてもらっている間にテーブルに買ってきたものを並べる。

紅茶とコーヒーとジュース。

三本も抱えていた腕には袋の持ち手の跡が残っていた。


お菓子は袋のままテーブルの脚の辺りに置いて、ホットスナックは一通り取り出す。

ほかほかのチキンの匂いに唾を飲み込んだとき、眞央が部屋に入ってきた。


氷の入った大きめのグラスを置きながら、それ、と眉根を寄せる。


「これ、チキン……スパイシーチキンとレモン風味の」

「なんでそれぞれ三つなんだよ」

「喧嘩にならないように」


そんな顔をされなくても、わたしだって子どもじゃあるまいしって思ったよ。

思ったけど、薫も眞央もいれば多く買っても食べてくれそうだったから買えるだけ買ってきた。


「まあ、食うけど」

「うん、どうぞ。召し上がれ」


紅茶をグラスに注ぐと氷が揺れる。

豪快にチキンにかぶりついた眞央はものの三口で平らげてしまって、くちびるがテカテカしてる。

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