仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
新しい始まり
翌朝、私は昨日までと同じように目を覚まし、キッチンに立っていた。

 今日はオムレツを作ろうとフライパンを温めてから卵を割り――。

「おはよう、紗枝さん」

「ぎゃっ」

「ええ……?」

 不意打ちで後ろから抱き締められ、咄嗟に奇妙な声を上げてしまった。和孝さんの困惑したような笑い声が聞こえる。

「そんな声を出すってことは、昨日よくなかったんだな」

「そそそそんなことはぜぜん」

「ぜぜん?」

「全然!」

 既に遅いけれど、なんでもない振りをしようと器に入れた卵を菜箸でかき混ぜる。勢いが強すぎて器から一部こぼれてしまった。

「何回もしてごめん」

「わわわわかったからあっちに行ってて!」

 濃厚な夜は私にとって刺激が強すぎた。思い出すだけで恥ずかしくて手が震える。

「やっぱり怒ってる?」
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