仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
もどかしいデート
 その日も私は仕事に勤しんでいた。

 式場に飾るブーケの手配をしに、提携している花屋へと向かう。

 駅へ向かう大通りの途中にあるその花屋は、うちのフラワーコーディネーターの元勤務先だった。

 ときどき店主自身もブーケを作ったりと協力してくれている。

「お世話になっております。MARRYの皆崎です」

 店内に入り、奥へ向かって声をかける。

 五秒も経たないうちに朗らかな笑みを浮かべた女性が顔を出した。

 店主の矢坂絵美さんだ。

「ああ! 誰かと思っちゃった。もっちーさん、お疲れ様です」

「もうもっちーじゃないですよ? 結婚しちゃいましたから」

「私の中でもっちーさんはもっちーさんなの」

 ほんわかした空気に私まで飲み込まれそうになる。
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