月に魔法をかけられて
瞳子さんと副社長
目が覚めると、私はベッドの上にいた。

(ここはどこ?)

ゆっくりと起き上がる。

白い壁と天井、淡いピンク色のカーテン。
カーテンの隙間からは、柔らかな陽射しが差し込んでいる。

木目のチェストの上には、7人の小人の置物がいろんな方向を向いて飾られている。

部屋に飾られた時計は、8時過ぎを示していた。

自分の服を見ると、女性もののパジャマが着せられてある。

腕や足には、所々に大きな絆創膏が貼られ、治療をされた痕跡が残っていた。

ふいに昨日の出来事を思い出し、左手で胸元の生地をギュッと掴む。


昨日、会社の帰りに2人組の男に連れ去られ、なんとか逃げ出し、彩矢に助けを求めて、そのあと………。

記憶を辿るように目を瞑ると、ガチャリ──とドアの開く音がした。


「あっ、美月ちゃん、起きたのね……」

心配そうに私の顔を窺う瞳子さん。

「えっ………。と、瞳子さん………?」

どうしてここに瞳子さんがいるのか分からず、私は呆然と瞳子さんの顔を見た。

「美月ちゃん、大丈夫? びっくりしたでしょ。安心して。ここは私の家だから」

「瞳子さんの……お家………?」

理由が分からず、さらに呆然としたまま瞳子さんの顔を見つめる。

「昨日ね、壮真が美月ちゃんを連れてきて……。ほんとにびっくりしたわ………。美月ちゃん、怖かったよね」

瞳子さんが目に涙を浮かべて私の手を握る。

私も涙をぽとりぽとりと落としながら、口角をあげて笑顔を作った。

「ごめんね……。多分私のせいだわ……。私が美月ちゃんをWEB CMに出したから……。本当にごめんなさい」

瞳子さんは私に向けてとても深く頭を下げた。

「と、瞳子さん……、やめてください。瞳子さんのせいじゃないです………」

私は頭を下げる瞳子さんを両手で制止ながら、瞳子さんの顔を覗きこんだ。
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