月に魔法をかけられて
初詣と願いごと
「あーら、たくさん買ってきてくれたのねー」

3つの大きな袋を抱えながら戻ってきた私たちに、玄関まで出てきた瞳子さんが声をかける。

「よく言うよ。瞳子が買ってこいって言ったんだろ……」

副社長がお酒の入った袋を瞳子さんに渡しながら抱っこしていた啓太くんを下ろし、私からアイスやケーキの袋を受け取る。

「あら、ケーキにアイスまで……。悪いわねぇ、壮真。まあ副社長なんだから、このくらいしてもらってもバチは当たらないわね」

ふふふっと微笑む瞳子さんに、啓太くんが瞳子さんのスカートを引っ張った。

「ママ、ふくちゃちょうじゃないよ。そうまだよ。ぼく、みづきにもおしえてあげたんだよ」

「んっ? どういうこと?」

「おなまえはまちがえちゃいけないんだよ。ほいくえんのせんせいがいってたんだから」

瞳をいっぱいに見開いて自慢げに瞳子さんに説明をする啓太くん。

そんな啓太くんを見て、副社長が笑い始めた。

「壮真、どういうこと? 啓太は何を言ってるの?」

「いや、美月が俺のこと副社長って呼ぶだろ? そしたら啓太が、副社長って誰だ?って言ってさ。俺だって説明したんだけど、啓太の中では俺と副社長が結びつかないんだよ。まあ、仕方ねーわな。だから美月も啓太に呼び方を直されたってわけ」

それを聞いた瞳子さんもケタケタと笑い始めた。

「やっぱり啓太は私の息子ねー。空気が読めないなりにいい仕事したじゃない……。あー、だから啓太にこんなにアイスやケーキを買ってきたってわけねー」

嬉しそうに副社長と私の顔を見る瞳子さん。

「じゃあ、美月ちゃんは啓太に壮真って呼べって言われたのね」

「は、はい……」

「啓太にはまだ壮真が副社長って分からないのかー。残念だわー。美月ちゃん、啓太のためにも壮真のこと、副社長じゃなくて壮真って呼んであげてね」

「わ、わかりました……」

私は頬を真っ赤にしながら頷いた。
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