星空ラブソング
第一章

始まりは突然に


窓の近くにあるテーブル上で、コーヒーを淹れたマグカップの中から湯気が宙にのびていく。


大学に出発前のひと時、
朝食を味わいながら私の中を巡るのは、
ラジオから流れるどこかの国のリズミカルな弦楽器の音楽と電車が走りゆく音、
視界の少し下に建物の屋根が立ち並ぶ景色、
それを覆うかのように広がる空の色。

大学で大阪から上京後、マンションの11階にあるこの部屋で、1人暮らしを始めてから3年が経過した。

幼少の頃から親の転勤で地元は何度か離れていたから、東京に出てくるときも環境が変わることにそこまで抵抗はなかった。

ただ、東京の駅を出た時、見上げた空が狭く見えたことには寂しさを感じた。

その気持ちを解きほぐしてくれこの家は気に入っている。

11階からの空は広くて大きい。

出来ればここで生活を続けていきたいけれど、あと1年もしたら完全に自分の足で立っていくことになって、今みたいに親が生活費を半分出してくれるなんてことはなくなる。

大学の商学部マーケティングコースで4年の春を迎えた。

4年生になって数日が経つのに、まだ将来進む道は見えていない。

自分が何になりたいのか、何をやりたいのか、アルバイトをしたり企業説明会に出たりしながら考える日々を送っている。

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