契約ウエディング~氷の御曹司は代役花嫁に恋の病を煩う~
初夜
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披露宴の後は彼の用意したスーツに身を包み、エクゼクティブスイートに移動。
ネオロココ調の豪奢なソファや家具に調度品が並んでいた。
お伽話のお城に二人で入り込み、王子様とお姫様になった心地がした。

「適当に寛ぐといい」
そう言われても、我が家でもない場所では寛げず、案山子のように立ち尽くす。
俊吾さんはリボンタイを外し、上着を脱いで、肘掛椅子の背もたれに無造作に掛け、慣れた所作で寛ぎ出した。
彼が用意してくれたスーツは涼し気な黄色の膝丈フレアスカートのブランド物スーツ、ブラウスはシフォン素材、肌に優しく着心地が良かった。

でも、パンプスの後ろに踵が擦れて靴擦れしてしまい、歩く度に傷口が痛かった。
ソファに腰を下ろすよりも先にパンプスを脱ぎたかった。
「パンプス脱いでいいですか?」



「もしかして靴擦れしたか?…サイズ合わなかったか…悪い。フロントに絆創膏があるか電話して訊いてやる」
俊吾さんはエスパーのように私の次の言葉を読み取り、機転を利かせて、フロントに電話してくれた。

「・・・ありがとう」

「ほら、スリッパだ」

俊吾さんは私にスリッパを用意してくれた。

「ありがとう」

私は礼を言って、早速肘掛椅子に腰を下ろし、パンプスを脱いでスリッパに履き替えた。

「どうせ普段はスニーカーだろ?」

「まぁ」

「でも、俺の妻になった以上はスーツにドレスも着こなして貰わないと困る。もう少し踵の高いのヒールでも颯爽と歩いて欲しいな」

「だから…私はあくまで代役で…」

「どうして拒否するんだ?昔は俺の後ろを金魚の糞みたいに追い駆けていたのに」







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