戦国占姫
第一話 独りの女

 桜の花びら舞う、四月。
 私は、はれて大学生となった。これから私の人生はどこへ向かって行くのか・・・。
 (ここから始まるのね)
 門の前で気合いを入れて一歩、進んだ。
 (よしっ、行こう!)
 満開の桜並木を一人で歩く。私は桜の花びらが風に舞う景色をしばらく眺めていたかった。周りが急に騒がしくなる。
 新入生を見かけると、手当たり次第に声を掛けまくるサークルの誘い 。誘う側からすれば必死なのだろうが、私はウンザリしていた。サークルには参加するつもりは無い。まるでナンパの練習をしているつもりなのかと疑いたくなる。こちらにお構い無しで気軽に話しかけてくる。
 (うっとおしい)
 もはや、景色を見ているような余裕は無い。一刻でも早く立ち去りたい。あらゆる勧誘を無視。スタスタと立ち去った。
 (なんなのよー、まったく・・・)
 朝からヒドイ目にあった。初日から遅刻なんてあり得ない。何とかギリギリセーフ。・・・タイミング的にはアウトだったかも知れないが、ここにビデオ判定は無い。私は素知らぬ顔をした。

 私は、最近ちょっと名前を知られてきた新進気鋭の占い師。それなりの収入もある。自分の店もある。皆のようにサークルで和気あいあいと遊んでいられない。
 (・・・ごめんなさい)
 学内で私は常に浮いている。食事も勉強も独りでいることが多い。私は賑やかで派手な生活は苦手。静かに図書館で本を読んでいる方がいい。私が友と呼べるのは四人だけ。アダ名で呼んでいるリーチ、ハンジ、カンゾー、ナオミ。

 そんな学生生活に終わりを告げるような事件が起きた。突然の出来事だった。
 その頃、私は悩みを抱えていた。どこで調べたのか分からないが、脅迫文が家に送られてきていた。
 その内容は「占い師を引退せよ! さもなくば・・・」と書かれていた。警察に相談したのだが、受け付けてもらえなかった。仕方がなく占い師を引退しようと思った。私にとって、占いなんてその程度だった。趣味の延長だと思っていた。私の占いで救われた人がいることなんて考えたことはなかった。

 私は、いつも通りの時間、いつも通りの通学路を通っていた。普段、何も起きなかったせいか油断をしていた。
 ある日、私は通学路で黒服を着た男達に拉致をされた。睡眠薬を染み込ませたハンカチーフ。それを顔に押し付けられ、意識を失った。どれだけ車で移動したのかは分からない。降ろされた場所は、見覚えのない土地。人気のない崖だった。同業者が雇った男達に私は崖に追い込まれ、足を滑らせた。崖の下は海。そこまでは覚えている。・・・それからの記憶は無い。
 私は、暗闇にのみ込まれた。
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