救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~

堅物シャイ(ニング)プリンス

執事田中との予定外の攻防戦はあったものの、その後の検診は順調に進み、残すところ後一人となった。

「もう16時過ぎか。意外と早かったな」

あやめはグーンと背伸びをして、最後の検診者が来るのを待っていた。

「失礼します」

「・・・!」

ノックの音と共に現れたのは、そう。先程からこの部屋のみで話題沸騰の

゛堅物シャイ(ニング?)プリンス゛こと

聖川光治、その人であった。

「3日ぶりですね。お元気でしたか?」

無意識に眉間にシワを寄せそうになったあやめだったが、先程の田中との約束を思い出し、極力自然になるように心がけて笑顔で話しかけることにした。

「はい。お陰さまで体調も万全です」

あやめの柔和な態度に、嬉しそうな照れ笑いを浮かべる光治が可愛い過ぎる。

゛こ、子犬みたい゛

田中の

゛少々、複雑なご家庭でお育ちになった゛

という呪詛の言葉が、あやめの心を大きく揺さぶってくる。

あやめは人情話に弱い、否、弱すぎるのだ。

゛もしかして田中はエスパーなのか?゛

情に訴える手段は、特にあやめには効果的だ。

自覚があるだけに手に負えない。

あやめは、チラリと天井に設置してある監視カメラがオンになっていることを確認してから

「それでは、検査データと照らし合わせながら問診、診察をしますね」

と、検診開始の言葉を口にすることで、己の複雑な感情を飲み込もうとした。

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