救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~

外堀

翌日。

AI執事田中の予言通り、都心の空は雲1つなくなく快晴、否、スモッグに覆われているため灰青色の空が広がっていた、しかも無風。

ニューベリーヒルズビルの屋上ヘリポート。

朝、ベリーヒルズビレッジ近郊の医師用マンションから否応なしに連れ去られたあやめは、現在、ホバリングするヘリコプターの風圧を間近に受けながら堅物シャイ(ニング)王子こと聖川光治に肩を抱かれて立ち尽くしていた。

目の前に現れたのは、多発タービンエンジンを搭載した最新機種で、視界不良または天候不良時にも飛べ、たしか軍事や救急搬送時にも使われることのある高度な安全性能が認められた最高級ヘリコプターだったはず。

もちろんお値段は数億を下らない。

「こちらは聖川家の自慢のヘリコプターでございます。機長も米軍上がりの腕利き・ジェームスが担当致しますのでご安心下さい。あやめ様」

ヘリは便利な一方で危険な乗り物でもある。

風の抵抗をモロに受けるため、離着陸の難しさだけでなく、特に海上を飛ぶ際に生じる目の錯覚がアクシデントを発生させる危険性はジェット機の比ではない。

だからこそヘリ本体が持つ立派な性能だけでなく、経験豊かな機長の存在は安心材料となる。

「はあ・・・」

驚きの性能を持つヘリについての、田中のどや顔の説明にあやめが気のない返事をしている理由は他にもあった。

「さあ、遠慮せずに乗りなさい。それとも私が手を引いて乗せてあげようかな?」

と、お茶目にからかってくる目の前の人物。

最近顔見知りになったあの人・・・が面前にいたからだ。

「聖川社長、何故ここに?」

「やだなあ、あやめちゃん、水くさいよ。パパと呼んでほしい」

そう、ここにはいるはずのないもう一人の人物とは。

それは、聖川ホールディングス現社長というだけでなく、光治の父でもある聖川博志その人であった。

彼は、光治があやめの患者であった時、父として光治の病状説明やインフォームド・コンセントに立ち合いあやめと面識があった。

だか、そんなの関係ねえという具合に博志の態度はフレンドリーだ。

゛パパ?゛

厄介な人物がまた増えた。

人の話を聞かない、マイペースな人物。

あやめは彼らに血の繋がりを感じずにはいられなかった。
< 68 / 101 >

この作品をシェア

pagetop