救われ王子にロックオン~溺愛(お礼)はご遠慮させて頂きます~

できる男達

「とにかく、いつまでもそうやって自分の殻に閉じ籠っていないで、落ち着いたら祭りに参加しなさい。今後のことはゆっくり話そう」

そう言って卓次郎はあやめの部屋を出ていった。

゛あー、もう限界゛

月曜から金曜日まで真面目に働いて、ようやく仕事から解放された夜には、高級な浴衣を着せられ暑気払いに連れていかれた。

やきもちを妬いた女性に絡まれるわ、楽しみにしていた里帰りを勝手に観光ガイド業務に代えられるわ、散々な目にあった。

里帰りしてみれば、味方と思っていた卓次郎と昭次郎まで侵略者の手下となり、挙げ句の果てには゛島の診療所で医師になりたい゛というあやめの夢まであっさり奪って退路を絶とうとしている。

完璧に外濠を埋められた気がしてならない。

『あやめの長年の思い込みは全て勘違いでした』

と説明されたところで、今さら簡単に頭を切り替えられるはずはないのに・・・。

あやめはそんなことを悶々と考えていたら、いつの間にか浅い眠りに引摺りこまれていた。

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