切ないほど、愛おしい

親友の妹 side徹

翌朝、俺は早くに目が覚めた。

午前7時。
いつもならもうひと眠りするところたが、今日は素直にベットから出る。

週末の土曜日。
週休2日が当たり前になって久しい今、俺の勤める鈴森商事も完全週休2日をうたっている。
もちろん出張だってあるし、接待ゴルフも少なくないから必ず休める訳ではないが、会社自体は休業日となる。

ピコン。
メールだ。

送り主は、副社長秘書。

『おはようございます。社長と副社長は無事出発しました。現地で事業本部長と合流して会場へ向かいます』

ご丁寧に状況説明のメールだ。

『よろしくお願いします。社長も副社長も慣れた取引先ですので、心配ないと思います。何かあればいつでも連絡をください』

これでよし。

今日、社長は大阪へ出張だ。
昔からなじみの取引先の大きなパーティーがあり、毎年この時期に呼ばれて行く恒例の行事。
いつもなら俺が同行するんだが、今年は現地スタッフと副社長秘書に任せた。

俺の勤める鈴森商事は代々続く総合商社。
今では上場もして一流企業の1つに数えられる。
社長はそこの4代目。
65歳の年齢には見えない若々しさで、今でも会社を引っ張っている。
俺は社長の秘書になって8年になる。

ブーブーブー。
今度は着信。

あれ、孝太郎?

こんな朝っぱらから電話が来ることは珍しい友人からの着信に動きが止った。
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