切ないほど、愛おしい

格好悪い女

朝食を食べた後は、徹さんと2人で不動産屋を回ることにした。

今までだってお兄ちゃんと出かける事はあったし、大学時代には彼氏だっていた。
それでも、こうして徹さんと過ごす時間はどこかが違う。


「どうする、もう少し回ってみるか?」

不動産屋を2軒周り3カ所ほどアパート見てから近くの喫茶店に入った。

「私は、最初に見たところがいいかな」

最寄駅から病院まで電車で1本だし、駅からも徒歩で10分ほど。
新しくも広くもないけれど家賃も手頃で条件は悪くない。

「俺はもう少し回ってみたらと思うけれど?」
「そうかなあ」

予算の上限がある以上、いくら見て回ってもあまり変わらないと思う。
それよりも早く決めて引っ越しの準備をしたい。

「そんなに急いでも良い事は無いぞ。今はあまり収入が多くなくても、これから先きっと増えてくる。目先の条件にとらわれて妥協するよりも先を見据えて長く住めるところを選ぶべきだ。どうせなら、アパートよりもセキュリティーのしっかりとしたマンションにしたら?」

「マンション?」

研修医の私の給料からするとちょっと贅沢な気がする。
けれど、徹さんの言う通りこれから先忙しくなれば引っ越しをする時間がなくなっていくかもしれない。

うぅーん。
悩みどころだな。
< 72 / 242 >

この作品をシェア

pagetop