ゼツボウカクレンボ

さようなら

「2人,どこに行ったー?」

「錫斗くん〜!涼音ちゃーん!」

…どこからか,そんな声がした。

あぁ,もう見つかってないの,私達だけなんだ。

––––––いよいよだ。

もう,自分が悪いって傷つかなくて済む。

もう,錫斗の言葉に傷つけられなくて済む。

「さようなら…」

私は錫斗に気づかれないようにポツンと呟いた。

もう,終わる。

私は新しくなれる。

この人を嫌いになって,新しい人生を歩める。

私はゆっくりと錫斗がいる方向を指差した。

“嬉しい”

そんな感情が邪魔をして,私は早口で錫斗をよく見ずに喋ってしまった。
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